本研究の目的は、次の三つである。第一は、人間活動による社会経済システム内部での物質のフロー量とストック量の同定、および社会経済システムと自然環境の間の物質フロー量を整合的に推計する手法を開発する。第二は、その手法を用いて世界全域の過去数十年間にわたる物質フローを物的産業連関表と物的貿易表として、また、ストック量については物質的ストック勘定表の形式で整備すること、第三は、それらの表をベースとして、経済活動の変化、技術の進歩および物質ストック量の蓄積などと物質需要変化との係わりをモデル化し、世界規模で見た脱物質化社会の可能性を検討することである。 具体的には、物質としてエネルギー財、エネルギー集約財の鉄、セメント、有機物に多く含まれる炭素、りん、を対象とし、世界を106地域区分を基本として、物的勘定表を整備する。方法論は、勘定表の整備には、制約条件付きCross-Entropy法を応用し、二段階で推計作業を行う。また、作成された勘定表をもとに、社会経済指標と物質需要の関わりを示す諸関数の同定には、計量経済的手法を用いる。将来の物質フローの変化の検討にでは、人口や経済発展の状況のみならず、リサイクルやプロダクトイノベーション、国際分業や貿易構造などの変化も取り込んだシナリオにて推計を行い、脱物質化社会を定量的に描く。
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