研究概要 |
微生物電池(microbial fuel cell, MFC)は, 微生物の触媒作用を利用して、有機物の持つ化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する装置である。本研究では, 排水中の有機成分から, 電子伝達剤(メディエータ)を使用せずに直接電気エネルギーを回収するエネルギー回収型排水処理システムの構築を目指している。本年度は、空気正極型一槽式微生物電池(容積250ml)を作成し、ペプトンと肉エキスを主成分とする人工下水からのバッチ方式による発電を試みた。微生物植種源として、下水処理場から採取した活性汚泥と嫌気汚泥を用いた。最大電力密度は、嫌気汚泥を用いた場合、合成下水中の初期有機物濃度に依存して、60mW/m^2(400mg-C/l)から126mW/m^2(2300mg-C/l)にまで増加した。微生物を植種した負極槽は、嫌気条件であるにも関わらず、活性汚泥を植種した微生物電池も高い発電能力を発揮した。合成下水の初期有機物濃度が620~2500mg-C/lにおいて、活性汚泥を植種した微生物電池の最大電力密度は、約100mW/m^2でほぼ飽和状態であった。これらの結果は、どちらの汚泥にも発電に利用可能な微生物が含まれているが、それらは異なる発電メカニズムを有していることが示された。また、高濃度の下水に対しては、20日間でも700mg-C/lの有機物が残存しており、排水処理としては、活性汚泥処理のような後処理が必要であることが示唆された。
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