研究課題/領域番号 |
19360242
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島岡 隆行 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80202109)
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研究分担者 |
大谷 順 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30203821)
崎田 省吾 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80398099)
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キーワード | 廃棄物処理 / 有害化学物質 / 環境質定量化・予測 / 環境分析 / 地球化学 / 焼却残渣 / 埋立地 / 風化 |
研究概要 |
一般廃棄物は概ね焼却処理されているが、焼却残渣の有効利用は十分に進んでいない。埋立廃棄物の50%以上は焼却残渣である。埋立地は埋立完了後も廃止基準に達するまで施設の維持管理や環境モニタリングが求められ、埋立地の供用期間(10〜15年)よりもむしろ完了後の維持管理期間の方が長い。これは地方自治体の財政を圧迫しており、切実な社会的問題である。これらを背景に、埋立処分された焼却残渣の50〜100年後の性状を把握することは、廃棄物処理事業上のみならず、埋立地周辺環境への影響を予測する上で重要である。本研究は、埋立処分された焼却残渣の50〜100年に及ぶ長期的な性状の変化、つまり焼却残渣の風化現象を捉え、埋立完了後の環境影響を明らかにするものであり、(1)埋立処分された焼却残渣の「物理・化学的な風化現象に関する研究」と(2)埋立処分された焼却残渣の「地球化学的な風化現象に関する研究」を行う。 本年度も昨年度に引き続き、粒子間の空隙構造の変化を化学的、物理構造的な視点から研究を進めた。長期間に渡る埋立地からの浸出水を模擬したカラム通水実験により、通水初期での脱塩現象と後期での脱塩現象における溶出元素組成の違いを確認し、ケイ素以外にアルミニウムの溶出速度も重要な因子であることを明らかにした。X線CTによる内部構造の可視化解析では、カラム内部の残存水分が解析結果に与える影響を感度解析によって評価した。残存水分が与える影響は無視できるものではないので、来年度の研究では通水→乾燥工程を経てX線CT測定を行うことで、実験的に直接、水分がCT画像解析に与える影響を評価することとする。 地球化学的な風化現象については、炭酸化実験によってCO2吸収の主体がカルシウムであり、ナトリウムやカルシウム、鉄、アルミニウムなどは見かけ上CO2吸収に影響を与えないことを確認した。CO2を吸収したカルシウムは結晶性のCalcite生成には至らず、アモルファス状の状態で存在することを明らかとした。CO2吸収(炭酸化)によって焼却残渣からの重金属(特に鉛)溶出が抑制される効果が現われるが、 LeachXSの計算では、鉄への吸着が溶出抑制に間接的ないしは直接的に関与していることが示唆された。この結果は、風化に伴う焼却残渣からの重金属溶出挙動に対して物理化学的吸着の影響が無視できないことを示唆しており、新規な成果である。
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