研究概要 |
本研究では, 経年による高強度コンクリートの耐凍害性低下の原因をひび割れおよび細孔構造変化に加え, 珪酸カルシウム系水和物(C-S-H)のナノ構造変化から解明することを目的としている. 前年度は、普通ポルトランドセメントを用いた硬化セメントペーストおよびモルタルを用いて径年を想定した乾湿繰返しおよび乾燥を与える環境変化養生を行い, 水銀圧入法, アルキメデス法, ^<29>Si-NMR, 窒素および水蒸気吸着によって細孔構造およびナノ構造の変化を評価し, 乾湿繰返しおよび乾燥に伴う耐凍害性の低下の主要因が, マイクロクラックだけではなく直径40〜2000nmの範囲の細孔量の増加にあることを明らかにしている. 今年度は, さらにフライアッシュセメントを用いたモルタルを対象に加え, 養生材齢および温度・湿度の条件を変化させた乾燥または乾湿繰返し, 水中養生を行った場合の細孔構造およびナノ構造の変化, 耐凍害性および両者の相関性について検討を行った. その結果, セメント種別や試験材齢によらず, 高温乾燥, 乾湿繰返し条件で細孔構造が粗大化し, 耐凍害性に影響を及ぼす40〜2000nmの細孔量が増加することを確認した. また、水銀圧入法を繰返す細孔構造解析を行うことにより, 細孔量と細孔径分布だけでなく, インクボトル型細孔に関しても検討を加え, 40〜2000nmの細孔量の増加とインクボトル細孔の増加に相関があること, インクボトル細孔の入り口径を粗大化させていることを明らかにした. さらに, 細孔構造変化と耐凍害性の相関性についての検討結果から、高温乾燥による40〜2000nmの細孔量の増加, インクボトル細孔の増加および入り口細孔径の粗大化が凍結水量の増加に影響を及ぼし, 耐凍害性の低下の原因となっている可能性があることを指摘した.
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