本研究は現場型柱梁溶接接合部の変形能力を向上させ、かつ施工が比較的容易である有孔フランジ工法を提案し、そしてその設計方法を確立することを最終目的とした。平成19年度は柱梁溶接接合部をモデル化した実大柱梁溶接接合部の破壊実験を行ない、応力比γ(孔部の応力/スカラップを考慮した梁端部の応力)が1.07以上で十分な変形能力が得られることを明らかとした。平成20年度は材料試験から得られた機械的性質を用いて梁断面H-400×200×13×21、H-612×200×13×21、H-800×200×13×21について、3次元弾塑性有限要素法解析を行ない、以下の成果を得た。なお梁せい612mmについては、平成19年度に行なった実験の荷重-変形関係および歪分布が、解析値と概ね一致していることを確認している。 1)いずれの断面においても応力比γを大きくするほど、スカラップ底とスチールタブとフランジのスリット部近傍の応力を低減できることを明らかとした。 2) 孔が柱に近すぎる場合、梁フランジに孔を設けてもスカラップ底に生じる応力は、同変位時の無孔のスカラップ底応力と変わらない結果となった。応力比γ=1.07の場合、孔をフランジ幅の0.75倍以上柱から離すことによって、スカラップ底の応力が効果的に低減できる。 以上の結果から、現場型柱梁溶接接合部の変形能力を向上させる工法として大きな意義を持つ有孔フランジ工法に関する設計法をまとめた。
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