研究概要 |
本研究課題は,軟弱地盤域の構造物の地震時応答を低減させ得る合理的な複合基礎の提示を目標としている。一般的に耐震設計の観点から軟弱地盤は良好な設計条件と見なされないが,地盤と建物との動的相互作用の基本的な特性(一般的に剛で大きな構造物ほど,また地盤剛性が低いほど逸散減衰定数が増加する)を逆手にとれば,上部建屋の応答を低減し得る合理的な基礎の設計が可能と考えられる。ねらいとしては,軟弱地盤の欠点である地盤剛性の低さを利用すると共に,建物周辺の駐車スペースや緑化スペースを結合した大きな平面形状を持つ複合基礎を建設し,高い減衰性能を有した下部構造の実現を図る。具体的には,上部建屋直下に位置する基礎構造を支持する地盤材料として,圧縮強度が高くある程度の減衰を有する建設副産物を再利用した材料の開発を目指す。また,駐車スペースや緑化スペース部には,植栽基盤に適用が可能な地盤材料の開発を目指す。本研究は,この点からも環境への貢献が期待できるものである。 研究初年度は,(1)繰返し三軸試験機の整備,(2)最終的に提案しようとする複合基礎の動的相互作用解析の2つのサブテーマに関する研究計画を立てた。次年度は,(2)の継続のほかに(3)植栽減衰ブロックおよび高剛性減衰材の調配合と繰返し三軸試験,および(4)軟弱地盤の常時微動測定の2つのサブテーマを掲げた。3年度目は,それまでに得られた知見に基づき,サブテーマ(2),(3)および(4)に関する研究継続と共に,高剛性減衰材試験のために不可避なCD試験およびCU試験のために三軸試験機に取り付ける三軸圧縮載荷試験駆動装置の増設を計画した。 (1)繰返し三軸試験機の整備 既存の三軸セル室を繰返し挙動が可能な三軸試験機に転用するための整備を行ない,次年以降の本試験に向けた予備試験を実施する。 (2)複合基礎の動的相互作用解析 提案する複合基礎全体としての地震時の挙動について,3次元薄層法に基づく解析ツールを用いて解析面から検討する。 (3)植栽減衰ブロックおよび高剛性減衰材の調配合と繰返し三軸圧縮試験 初年度の植栽減衰ブロックの調配合結果に基づき,最適な調配合を探ると共に,基礎直下に打設予定の高剛性の減衰材の可能性を繰返し三軸圧縮試験により検討する。 (4)軟弱地盤の常時微動測定 常時微動測定結果と土質調査報告結果の適合性について検討するため,都内の軟弱地盤域での微動測定を実施する。H/Vスペクトル等の測定データの解析結果から,常時微動と土質調査報告結果の相関性に関する検討を行い,地盤種別等の推定の可能性を探る。
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