研究概要 |
設計製図における熱環境設計教育手法の提案を行うために,以下の解析方法によって熱環境設計における重要な熱的知識を整理・分類した。都市・建築熱環境設計を行う際に考慮すべき主要な要素として,(1)都市・建築空間を構成する材料,(2)空間形態,(3)都市・建築緑化の3項目に分類することができる。材料及び空聞形態は表面温度形成に大きく影響を及ぼす要素であり、緑化は表面温度上昇を抑制する手法として効果的な要素である。 筆者らが開発した3D-CAD対応熱環境シミュレータを用いて,設定した建物モデル及び実在市街地を解析対象として上記項目(1)〜(3)が都市・建築外部空間の表面温度形成等に及ぼす熱的影響の特徴を分析した。その結果,例えば,材料の日射反射率と熱容量の違いが大気への顕熱負荷を表す指標であるヒートアイランドポテンシャル(HIP)に与える影響として,木造住宅のように熱容量が比較的小さい建物から構成されている対象地(街区)ではHIPの立ち上がりが早く日中のHIP値が大きいが,夜間のHIPは小さくなる。これに対し,RC造建物のように熱容量が比較的大きい場合のHIPは日中低く,夜間が高い傾向となる。 可視化教材の開発に関しては,上記項目(1)〜(3)が都市・建築外部空間の表面温度形成等に及ぼす熱的影響の特徴を理解しやすい形で提示するために,ビジュアルな教育素材として利用可能な可視化資料を作成した。例えば,以下の項目に関するシミュレーション結果を表現する図表,静止画像・動画(アニメーション)を作成した。即ち,日射反射率・熱容量の違いが表面温度形成に与える影響,熱容量の違いによる蓄冷・放射冷却効果,保水性舗装による冷却効果とその持続性,都市・建築緑化の熱環境改善効果,空間形態の違いによる効果の違い。また,熱環境に大きく影響する要素(日射反射率,熱容量,日影割合等)の総合影響度合を把握できる都市街区のヒートアイランドポテンシャルチャートを作成し,その適用方法を整備した。
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