本年度は東京都内にある事務所ビルを主な対象として、独自に開発した性能評価システムを用いて、長期的な自動計測による気象観測・窓廻りの計測を行った結果、ブラインド制御下の窓面において、時々刻々日射を遮蔽しつつ間接的に昼光照度として寄与する上向き光束が導入されている様子を明らかにした。同時に、日射遮蔽に重点を置いた制御では、スラットが閉じた状態となる西方位窓面の午後の時間帯における可視光透過率は極めて小さくなっており、特に日射が弱まる夕陽の時間帯において昼光が殆ど導入できていない状態が観察された。また、本建物におけるブラインド操作履歴データ分析および執務者アンケート調査の結果、ブラインド自動制御が執務者に受け入れられている一方で、天候や時間の変化・眺望性といった室外の変化を室内に取り込むという窓本来の機能への要望が高いことが明らかとなった。このことは、外乱を遮断して均一で変化の少ない室内環境を形成するという、従来の環境計画において主眼としてきたものとは異なる方向性を示唆している。 これらの検討と並行して、2次元色彩輝度計を用いて本学構内における昼光の色味についての実測を行い、ブラインド・窓仕様によって建築空間内に導入される昼光の色味の分布が異なる様子を定量的に明らかにした。また、被験者実験を行った結果、ブラインド・窓仕様による昼光の色味に対する認識に明確な差異が生じており、従来の輝度・照度といった物理量に加えて、色味という質による評価軸が有効となりうることが明らかとなった。 また、詳細な気象データの測定結果に基づいたシミュレーション分析により、ブラインド制御時間間隔・閾値判断方法による気象への追従性を明らかにした。さらに、熱・光を連成したシミュレーションによる数値解析から外界の変化を積極的に導入するブラインド・窓仕様がエネルギー面においても優位であること等を示した。
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