本研究は、密集地に建つ戸建て住宅を主たる対象に、シミュレーション技術を効果的に活用して、通風の有効利用のための最適計算法の確立を目指したものである。本年度は屋根開口部の通風モデルにおいて、昨年度に引き続き実大建築の通風性能評価を想定した実測を実施し、開口部の解放条件による室内通風・気流環境の相違を把握した。また実測対象建物の周辺を含めたCFDを実施し、室内気流構造が実測とCFDで良好に対応することを確認した。 またCFD計算の際、より計算負荷の小さい手法として提案した領域分割法について、これまでは従来の計算方法との比較のみを実施するに留まっていた。本年度は風洞実験結果と比較することで領域分割法の予測精度検証を実施した結果、十分な予測精度を確認した。さらに領域分割法を適用したCFD解析を実施し、種々の開口条件における通風性能について、地域別・時間帯別の通風気流データベースを作成した。その後データベースをもとに、東京と大阪を例にとって通風性能評価を行い、室内気流分布や居住域平均風速の観点から最適開口部配置を検討した。その結果、居住域風速が最大となる開口部の組み合わせは地域・時間帯の影響を受けたが、開口部流入風速に対する居住域平均風速の比(風速比)の観点からは、地域や時間帯を問わず壁コーナー部分と天窓開口部の組み合わせが有効であることが確認された。
|