1.建築考古学調査の実施:大学院生に名の研究補助社を伴って、フランス・プロヴァンスのサン=ポンス修道院、ブルゴーニュのマジユ、ル・ピュレ教会堂の計3件のロマネスク遺構の調査を実施した。石材の使用様態、軸線のずれ、各種形態のバリエーション等の様々な項目に渡っての詳細な観察を行い、尺度論にも基づいて、計画意図や施行実態、プロセス、建設経緯と当時の建物の状態、意味に関わる重要な知見を得た。施行の中断、施行中の計画変更、現状と異なる当初形式が推定でき、現在結果の講評の為の準備中である。 2.調査結果の情報共有:平成19年度分の調査結果の整理、図化は未完であるが、従来の調査で研究室に蓄積されているデータ、図面のデジタル化の方法の検討を開始し、平成20年度からの実施が可能となる様に準備を行った。また従来のデータ、図面の一部は、今回はリヨン大学の考古学・美術史研究室に寄贈し、共有化を図った。 3.日本的建築考古学の方法論の発信:フランス国立科学研究センター主宰のアジア研究ネットワークの総会に出席し、JAPARCHIのセッションにおいて、日本建築のフランス人専攻研究者と意見交換を行い、共著論文集、及び公開セミナーの計画を立てた。 4.研究室所蔵のスライドのデジタル化:従来の研究を通じて収集して来た研究室所蔵の35mmスライドについて、今年度は、1200コマ程度デジタル化を完了し、西洋中世建築画像アーカーイヴ作成に向けての実施を開始した。 5.日本の論文のフランス学術誌での発表:日本建築が西洋の建築観では把捉できないノマードな性格と極めて強い技術指向を持つ事を明らかにし、また聖性の文化人類学の観点を借りると、日本の建築も西洋の建築と同一地平線上で論じることの出来る内実と表象を持つ事を論じた二編の論文をフランスの学術論文史に発表した。
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