最終年度であり、四年間に得られた実測データ・資料等の整理、実測図面の完成、次の研究である本格的なフランスへの発信のための具体的計画の検討、実測図面等のフランスとの共有などに重点を置いて研究が実施された。 (1) 本研究での最後の建築考古学調査を9月後半に実施した。同じ建築物を研究対象として別経費で渡仏した研究協力者(大学院生)及び一部ボランティアで参加した研究補助者(学部学生・院生)を伴い総勢11名で、南ブルゴーニュのマッシーとサン=ヴァンサン=デ=プレの両教会堂、及びプロヴァンスのラ=セル、シルヴァカーヌ、セナンク、ル・トロネの各修道院の集会室を2週間ほど欠けて調査し、正確な実測図面を作成した。 (2) 特に南ブルゴーニュの調査はこの地方の文化財保護団体の協力と要請で行われ、立面、断面も作成し、これら実測図面は国の文化財局に保存された。調査結果は速報的に学会発表を行い、一個の教会堂に見られる建設過程や計画の断絶、建築としての複合的性格を、実測や寸法から明らかにしえる分析結果を得た。南ブルゴーニュの二棟の教会堂の調査については、現在文化財局へ提出する報告書を作成中である。 (3) セナンク、ル・トロネ、シルヴァカーヌ、ラ・セルの各修道院の集会室については、これまでの調査結果とも総合して検討し、建設過程、工事を実際に行った職人のアトリエ、使われた物差しのバリエーションの再現を可能にする分析を行い、速報的論文を発表し、まとまった学術論文執筆の準備段階が出来た。最終的にはフランスでの論文発表を考えて現在論文執筆中である。 (4) 四年間、継続して行って来たフランスへの発信のための基盤となるフランス人研究者との関係の構築に関しては、22年度に計画されていた研究者招聘、シンポジウム開催は事情により実現できなかったが、次の研究としての具体案の議論を、数度に渡りフランス人研究者たちとすることが出た。
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