本研究の目的は、アジアの歴史的都市の再生を総合的に明らかにする全体構想の第一歩として、東アジア・東南アジアにおける主要都市を対象とし、近年の園犀星の展開過程を空間論的及び社会論的に認識・把握しながら、都市史研究をベースにした都市再生のための方法論を一段と拡大・精緻化し、現代都市の創造に向けての歴史的な諸課題や論点を抽出することにある。 平成19年度の共通テーマ「1.歴史的都市の形成過程とその諸類型」を踏まえて、平成20年度の共通テーマ「2.都市再生の展開過程に見る空間論的及び社会論的特性」について研究を行った。具体的には、都市再生の展開過程に関する都市類型との関連が共通のテーマとなり、A上海・マカオ・台北、Bルアンパバーン・シンガポール、Cソウル・東京・島原を主な対象とし、主な資料調査先としてはマカオ・アーカイブセンター、上海図書館、シンガポール国立公文書館、フランス国立公文書館、台湾公文書館分館などから多くの資料を得た。とくに、上海では万博開催で様々な都市開発が進むなか、一方で歴史的な建築遺産をいかに保存しながら新たな開発計画を行うかが大きなテーマとなっており、水辺の整備ととともに魅力的な変容をとげつつある。また、ルアンパバーンでは仏領期の建築を巧みに利用しながら、観光化へ結びつけつつ、きちんとした生活を維持するための方策などが作られていることを明らかにした。 平成21年度は引き続き平成20年度と同じ「2.都市再生の展開過程に見る空間論的及び社会論的特性」を年度テーマとして研究を実施する予定である。
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