研究概要 |
本年度の研究により,以下の成果を得た. (1)反応性イオンプレーティング法により作製したInN薄膜の微細構造は,堆積中の窒素ガス圧力に依存しており,窒素ガス圧力によって,さまざまな微細構造のInN膜を作製することができた.それらのEC特性評価から,結晶粒が大きいほど,結晶粒界が広いほど,また結晶粒界のギャップが膜厚方向に短いほど,EC応答特性が向上することがわかった.一方,色変化量は,膜の有効表面積が広いほど向上することがすでにわかっているため,構造によっては,EC応答特性と色変化量が,二律背反の関係となることがわかった. (2)現有の活性窒素源支援真空蒸着装置の基板ホルダーに,ハロゲンヒーターを利用した基板加熱装置を組み込み,モーターにより自転させながら,基板温度を300℃まで加熱させることができるように改造した.このシステムでGaドープInN薄膜を斜め堆積し,結晶性および微細構造の基板温度依存性を調査した.その結果,基板温度が高いほど,結晶性の高い膜が堆積すること,また微細構造は,ナノ柱状晶の直径が太くなり,柱状晶間のギャップが広くなるとともに,ナノ柱状結晶の側面が滑らかになることがわかった.さらに,Ga濃度とEC色変化波長領域の相関から,バンドギャップの拡大により色変化領域が短波長側にシフトすることが確認され,シフト量とGa添加量をバンドギャップ変化に由来する近似曲線で表すことができた. (3)反応性スパッタリング法を用いて,基板温度420℃において,閃亜鉛鉱型結晶構造を有する窒化スズ(SnN)薄膜を堆積することに成功した.このSnN膜のEC特性を評価したところ,室温堆積によって得られるスピネル型結晶構造の窒化スズ(Sn3N4)と同様,近紫外〜近赤外の波長領域において,透過率変化を示さなかった.
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