研究概要 |
本年度の研究により,以下の成果を得た. (1) 反応性イオンプレーティング法に斜め堆積法を適用し,緻密層と離散的ナノロッド層の2層構造からなるInN薄膜を作製した.緻密層とナノロッド層の厚さ比が1:1のとき,最もEC応答特性が良好であった.また,EC応答速度の支持電解質濃度依存性を調査した結果,応答速度は支持電解質濃度とともに向上し,10^<-2>mol/dm^3以上で飽和した.このことから,柱状結晶間空隙でのイオン拡散が律速因子の一つであることが明らかとなった. (2) 活性窒素源支援真空蒸着に斜め堆積法を適用し,離散的ナノロッド状構造を有するIn_<1-x>Sn_xN薄膜を作製した.基板温度をハロゲンヒーターにより200℃に加熱した.少量のSn添加(x<0.2)の場合,著しくキャリア密度が増大し,EC特性調査の結果,Sn組成の増加に伴いEC色変化波長域が短波長側へシフトすることがわかった.x>0.2の高Sn組成領域では,InNと同程度までキャリア密度が減少する一方で,EC色変化波長領域はInNから短波長側へシフトしたまま変化しなかった.ただし,Sn組成とともに色変化の大きさは減少した.以上の結果から,低Sn組成では,Sn組成に従うキャリア密度変化に伴う光学ギャップ制御により,EC色変化波長領域が制御可能であることが明らかとなった.一方高Sn組成では,InNとIn_<1-x>Sn_xNでバンド構造が大きく変化することがわかった. (3) 反応性スパッタリング法を用いて,成膜圧力および成膜時基板温度を制御することにより,スピネル型Sn3N4,閃亜鉛鉱型結晶構造SnN,およびアモルファスa-SnN薄膜を作り分けることに成功した.それぞれのEC特性を評価したところ,結晶性のSn3N4膜およびSnN膜はEC現象を示さなかったが,a-SnN膜は近紫外〜近赤外の波長領域において,数%程度の透過率変化を示した.
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