研究概要 |
本研究では,高周波反応性イオンプレーティング法に斜め堆積法を導入することによりInN薄膜の微細構造制御を行い,EC応答特性を評価して律速因子を明らかにした. 薄膜の断面微細構造がEC応答特性に与える影響を調査するため,柱状結晶間空隙サイズの異なる薄膜を積層した二層構造化InN薄膜を作製し,EC応答特性を評価した結果,以下のような律速因子を考えられることがわかった.1.溶液側から粗な柱状結晶間空隙深部までのイオン供給,2.基板側から柱状結晶へのキャリア供給,3.密な柱状結晶粒界への電解質の浸透とそこでのイオン輸送. また,支持電解質水溶液濃度およびpHがEC応答特性に与える影響を調査した結果,イオン輸送の律速因子は,さらに2つの因子に分けて考える必要があることがわかった.a.沖合から空隙深部までのイオンの供給,b.空隙深部から沖合までのイオンの離脱.特に低い濃度領域では,供給が離脱に対して律則する結果が得られた. 本研究の成果を総合して,応答速度の最適化を図った結果,目標とした0.016sは達成できなかったが,最も早いEC応答時間として0.1s以下を実現した.しかし,応答速度の速い試料は色変化繰返し耐久性が低い傾向があった.表面吸着型EC材料を実用化するためには,今後,耐久性の向上に関する研究が不可欠である. InNと同じn型縮退半導体であるITO膜を高周波マグネトロンスパッタ法によって作製し,近紫外領域において,最大18%の透過率変化を伴うEC現象が起こることを発見した.
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