平成20年度で確立した単波長での磁気光学カー効果の計測装置を改造し、ほぼ同じ光軸上で測定光と反射光を扱うことで曲率半径の小さい試料表面での分析を可能にした。そして、磁気光学効果スペクトル測定を行うために入射光源として高出力キセノン光源に置き換え、高いS/N比の信号を得るべく信号処理系を拡充した。また、CoPtなど鉄族-白金族の試料ではその高い密度のために電磁浮遊が困難と予想されていたが、本年度行った浮遊法の改良により、フラックスを使うこと無く浮遊により過冷却状態を達成し、カー回転角とカー楕円率の同時測定を行った。さらに、浮遊した鉄族-白金族過冷融液にチルプレートを接触させ急速凝固させ得られた固相に対して、光学顕微鏡による組織観察、磁化率測定などを通して、過冷融液から現れる初晶の結晶学的特性および磁気特性を調べた。 磁化率の変化をリアルタイムで求めたところ、CoPd以外の鉄族-白金族の試料でも過冷却域においてキュリー・ワイス則に従うように見える磁化の急激な上昇を確認した。またそれらの融液の過冷却度が大きくなるにつれ、超伝導マグネット内のごく僅かな磁場勾配が生み出す磁気力により試料が回転楕円体の形状となり、ほぼそのままの形状で急冷凝固することに成功した。以上の結果から、本研究で取り扱った鉄族-白金族の過冷融液は液体のまま磁化させ凝固させることが可能であることを明らかにした。また凝固後試料の組織観察から組織配向の向上が見出された。
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