研究概要 |
本研究では,実用超伝導体の臨界温度の上昇を通じて,臨界電流特性をはじめとする様々な材料特性を飛躍的に向上させることを目指している。実用超伝導体の多くは化学組成が理想組成からずれていることから,臨界温度上昇の余地が大きく,固体化学的な手法で理想組成に近付けることを進める。 対象とする物質は銅酸化物超伝導体である希土類123系とBi系2223相,およびニホウ化マグネシウムである。19年度の研究成果の概要を以下に記す。 希土類123系では最も高い臨界温度が期待できるLa123の作製プロセスの見直しを行ない,還元一急冷プロセス加えて作製した焼結体において再現性良く臨界温度を94Kまで上昇させることに成功した。La123について,これより高い臨界温度の報告は過去2例しかなくその追試成功例もないことからこの成果は一応評価されるべきものと考える。しかし,結晶構造解析より金属組成比が未だずれていることがわかっており,一層の合成プロセスの最適化が必要である。 Bi系2223相については,金属組成比および焼成,後熱処理条件の最適化によって,焼結体として115.4Kという最高の臨界温度を達成した。また,焼結体において114Kを超える臨界温度を示す金属組成にかなり広い範囲が存在することを明らかにした。Bi系2223線材においては後熱処理条件の最適化によって,6種の仕込金属組成が異なる線材で,117K台の臨界温度を実現した。この結果は線材においても広い金属組成から高い臨界温度が実現していることを意味しており,その中での最適化によって一層の向上が期待できる。 2ホウ化マグネシウムついては,臨界温度上昇のための様々なドーピングや,高純度化を進めたが19年度には顕著な進展は無かった。
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