研究課題/領域番号 |
19360293
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
下山 淳一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20251366)
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研究分担者 |
岸尾 光二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50143392)
堀井 滋 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (80323533)
荻野 拓 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (70359545)
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キーワード | 超伝導体 / 臨界温度 / 精密化学組成 / 臨界電流特性 / ドーピング |
研究概要 |
本研究では、実用超伝導体の臨界温度の上昇を通じて、臨界電流特性をはじめとする様々な材料特性を飛躍的に向上させることを目指している。実用超伝導体の多くは化学組成が理想組成からずれていることから、臨界温度上昇の余地が大きく、固体化学的な手法で理想組成に近付けることを進める。 対象とする物質は銅酸化物超伝導体である希土類123系とBi系2223相、およびニホウ化マグネシウムである。20年度の研究成果の概要を以下に記す。 希土類123系では臨界温度の上昇には成功しなかったが、興味深い成果として、これまで金属組成に不定比性が無いとされてきたY123において、これの存在を初めて確認することができた。具体的にはBaサイトの〜3%までYが置換し、臨界温度が大幅に低下することを見出したほか、Cu過剰の組成からは従来に無い格子定数を持つ臨界温度が約50KのY123が生成することも発見した。これらは適当な高酸素分圧下(2〜5.5気圧)での焼成によって得られるものである。これらの知見は非平衡状態で成膜される薄膜材料やY過剰組成である溶融凝固バルクの特性の最適化にきわめて重要なものである。 Bi系2223相については、バルク体で115.4Kの臨界温度を達成したほか同時に臨界電流特性の改善を達成すべく、不純物相が生成しない条件での臨界温度向上を銀シース単芯線材にによって実施した。仕込金属組成比をほぼ定比とし、最終焼成を300気圧下で行い組織を緻密にした後、725〜750℃で還元処理を行う方法で不純物相の生成を抑制したところ、臨界温度は116.2Kまで上昇した。これは臨界電流特性の阻害因子のーつであるPb3221相の生成を伴わない方法としては最高の値である。このほか、定比金属組成に近いBi系2223配向バルク体においてSrサイトへの希薄REドープが臨界電流特性改善に有効であることを初めて明らかにした。MgB2の臨界温度については顕著な成果は無かった。
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