研究課題/領域番号 |
19360295
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
篠崎 和夫 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00196388)
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研究分担者 |
脇谷 尚樹 静岡大学, 工学部, 教授 (40251623)
鈴木 久男 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70154573)
田中 順三 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10343831)
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キーワード | 酸化物イオン導電体 / エピタキシャル薄膜 / 酸素センサー / Si基板 / 酸素濃淡電池 / PLD装置 / 反応性イオンエッチング |
研究概要 |
酸化物イオン導電性固体電解質の動作温度と内部抵抗の低下を、酸化物イオン導電体をSi基板等の熱膨張係数が異なる基板の上に成膜し、薄膜に応力を印加することで結晶格子に歪みを与え、バルクセラミックスでは得られないイオン導電性の実現を試みることを目的にしている。初年度は以下の検討を行った。すなわち、Si基板上にYSZエピタキシャル薄膜を形成し、Si基板側から反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いてSi基板の一部を除去する条件を検討した。また、市販の酸素分圧を可変したガス発生装置と、固体電解質燃料電池試験装置を組み合わせて、様々な酸素分圧下でのこのようにして作成したYSZ薄膜の電気伝導率および起電力の測定を行った。この際に、薄膜形成条件(膜厚、バッファ層の導入、基板厚さの変化等)の影響を確認した。 作成したYSZ薄膜はSi(001)基板直上に(001)エピタキシヤル成長しており、表面は非常に平滑で、微構造観察においても全く組織などは見られなかった。薄膜X線装置を用いた応力測定の結果、成膜圧力5.5×10^<-4>Torrおよび10mTorrで成膜したYSZ薄膜は見かけ上、圧縮応力を示した。これは、低酸素分圧下で引っ張り応力が印加されたために、大量の欠陥が導入され、そのため、バルクの格子定数との比較で単純に考えると圧縮応力のように考えられたものと思われる。製膜圧力300mTorrの試料は強い引っ張り応力を示し、これは十分に酸素が供給されたために酸素欠陥の状態がバルクと同様になったためと考えられる。RIE装置を用いたSi基板のエッチング条件は、基板厚さが0.5mmと厚いために、多くの困難があった。最終的にA1マスクとRIE条件の最適化によってほぼ満足なエッチング条件を得ることが出来た。その際、YSZに対しての化学的なダメージは見られなかったが、一部のサンプルでは亀裂が生じた。YSZ薄膜にかかる応力と亀裂の入りやすさには相関があり、引っ張り応力を受けている試料は確実に膜が破壊されてしまった。また、同じ応力状態でも、膜厚が厚く(850nm程度)なると亀裂が入りやすくなる。交流インピーダンス測定の結果、見かけ上、圧縮応力を受けているYSZ薄膜は非常に高い電気伝導率を示した。電気伝導の活性化エネルギーは約0.4eVであり、報告されている値よりもかなり小さな値を示した。また、350〜550℃までの温度域で酸素分圧に対応するEMFを測定することが出来た。特に、350℃においては理論値と近い値を示し、YSZ薄膜そのものが低温で十分酸素分圧を検知することを見出した。
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