研究課題
酸化物イオン導電性固体電解質の動作温度と内部抵抗の低下を、酸化物イオン導電体をSi基板等の熱膨張係数が異なる基板の上に成膜し、薄膜に応力を印加することで結晶格子に歪みを与え、バルクセラミックスでは得られないイオン導電性の実現を試みることを目的にしている。初年度、第2年度はSi基板上にエピタキシャル成長したY_2O_3を添加したZrO_2(YSZ)薄膜のSi基板側の一部を除去し、様々な酸素分圧下で作成したYSZ薄膜の電気伝導率および起電力の測定を行った。また、YSZ薄膜の微構造を観察し、その応力状態を検討し、表面は非常に平滑で、均一な組織であること、YSZ薄膜は見かけ上、圧縮応力を示すのに対し、Gd_2O_3を添加したCeO_2(GDC)薄膜では製膜状態で、引っ張りから圧縮の状態まで、応力状態が変化していることを見いだした。平成20年度は薄膜の応力状態の原因を探るために、成膜条件、アニール条件と薄膜の応力状態の関連を検討し、応力状態が複雑に変化する原因を明らかにした。すなわち、薄膜の圧縮状態を生み出す主な要因として、本研究の成膜方法であるPLD法で生成する高エネルギー粒子の薄膜へのイオン打ち込みの効果の寄与が大きいとの仮説を導き、YSZの場合は打ち込みの際の応力が成膜後も保存されるのに対し、GDCの場合は、成膜中にアニール効果が起きるために、イオン打ち込みの効果が打ち消され、冷却時に基板との熱膨張差に起因して、引っ張り応力が残留するものと結論した。さらに,その仮説を確認するために、YSZ薄膜の成膜後にアニール操作を行うことで、応力状態を圧縮から引っ張りまで変化することに成功した。これまでの経過から、あらたに酸化物イオン導電体を薄膜化すること自体によって、酸化物イオン導電性が大きく変化することを見いだし、さらに応力状態がどのように影響するかについて検討することが必要であることが明確となった。
すべて 2008
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