本研究の目的は強誘電体と強磁性体を複合化させたマルチフェロイックについて、強誘電性と強磁性間で相互作用が生じる原因を解明することを通して、巨大な相互作用を発現させるための指導原理を提案することにある。20年度までにオーロラPLD法により成膜中に磁場印加を行うと、薄膜に印加される残留応力が変化し、このために薄膜の強誘電性が変調出来ることを明らかにしている。また、強誘電性の変調は強誘電体(BaTiO_3)と強磁性体(CoFe_2O_4)を同時にエピタキシャル成長させたマルチフェロイック薄膜において外部磁場を印加させるとさらに変調可能であることを見出している。また、薄膜の誘電率も外部磁場の印加によって変化することを見出している。このことは薄膜の誘電率がこれまでに知られていた、電場印加による変調できる現象に加えて磁場印加によっても変調可能であることを示している。すなわち、電場・磁場変調型の新しいチューナブルキャパシタが原理的に可能であることを示している。 21年度は複合型マルチフェロイックの相互作用を強誘電体マトリックス中に強磁性体のナノピラーが林立し、かつ強誘電体と強磁性体の双方が酸化物電極上にエピタキシャル成長する1-3型に加え、強誘電体層と強磁性体層を交互に積層させた2-2型構造についても薄膜を作製し、相互作用について検討した。その結果、2-2型では強磁性体の積層数の増加によって強誘電体の誘電率が増加する現象が見られた。回路シミュレーションによりこの現象はPZT-NFO二成分系モデルでのMaxwell-Wagner効果の理論計算とほぼ一致した。すなわち、PZT薄膜の強誘電特性は強磁性体であるNFO層の導入によって制御できることが明らかになり、1-3型および2-2型の両方について強誘電性と強磁性の相互作用が発現することが明らかになった。
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