研究課題
本年度は、前年度に化学溶液法による作製条件を確立したペロブスカイトBiFeO_3系化合物薄膜が発現する物性の解明を中心に調査した。ここでは、昨年度に引き続きBiFeO_3系薄膜へのアクセプタ元素であるMnのドープ効果および状態解析についてBiFeO_3系バルクセラミックスも用いた評価も含めて検討した。特に軟X線吸収分光による解析結果より、BiFeO_3結晶構造中にドープされたMnは、Mn^<2+>として存在し、ペロブスカイト構造中の八面体サイトに位置するFeイオンの価数状態を3価に安定化させて価数変動を抑制し、本化合物系で深刻な問題となっているFe^<2+>とFe^<3+>間のホッピング導電を生じにくくさせて薄膜試料の絶縁特性を飛躍的に向上させる働きがあることがわかった。実際に薄膜試料のリーク電流特性を測定してその結果を詳しく解析したところ、Mnのドープ有り無しに関わらず高電界下ではホッピング導電による機構でリーク電流が支配されていることが明らかになったものの、Mnドープ試料は2桁以上リーク電流値を低減させられることがわかった。その結果、薄膜が発現する諸特性のPbTiO_3固溶量依存性もより明確となり、本固溶体系におけるモルフォトロピック相境界組成(BiFeO_3:PbTiO_3=7:3)付近で最大の強誘電特性を示すことが、室温域においても確認できた。一方、BiFeO_3-PbTiO_3系薄膜について磁気的特性を評価したところ、自発磁化を有する強磁性体に特徴的な磁化挙動を示した。特に0.7BiFeO_3-0.3PbTiO_3組成においては、これまで非常に困難とされてきた本研究の目標である室温域で大きな強誘電性(残留分極値:40μC/cm^2以上)と強磁性を同時発現する薄膜の作製に成功した。ここでの研究成果をもとに、磁気-電気相互作用の正確な評価法の確立を行い、そのような効果を利用した電子デバイス(新規メモリ、センサ等)応用に繋げることが今後の課題である。
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