研究課題/領域番号 |
19360298
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 勝久 京都大学, 工学研究科, 教授 (80188292)
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研究分担者 |
藤田 晃司 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50314240)
村井 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (20378805)
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キーワード | 磁性 / スピンエレクトロニクス / 酸化物磁性体 / 磁性半導体 / 薄膜 / 電気伝導 / ホール効果 / パルスレーザー堆積法 |
研究概要 |
本研究ではスピンエレクトロニクスの世界で未開拓である酸化物結晶をもとに、磁性体および半導体として高い機能を持つ薄膜を精密な条件下で精度よく作製するとともに、電荷、スピン、光が高次に相互作用して現れる新しい現象を利用したスピン工学素子を創製することを目的としている。本年度は、物質探索と基礎的な磁性と電気伝導特性の評価に力点を置いた。まず、パルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いて高品質のFeTiO_3-Fe_2O_3系およびFe_3O_4-Fe_2TiO_4系の磁性半導体薄膜を作製することを試みた。これまでの研究で、合成条件の制御により単相で秩序相がエピタキシャル成長したFeTiO_3-Fe_2O_3系薄膜の合成に成功しており、それが良好な磁気的・電気的特性を示すことを明らかにしたが、基板と薄膜の格子定数の違いにより界面には数原子層のディスロケーションが存在しており、デバイス化にはより優れた単結晶薄膜を作製する必要がある。また、これまではc軸配向した薄膜のみが得られており、さまざまな原理に基づくスピン工学素子を考えた場合、c軸が薄膜面内にある単結晶薄膜の作製も必要である。本年度はこのような課題に関する実験を行い、a軸配向したFeTiO_3-Fe_2O_3系薄膜の作製に成功した。また、基板と薄膜の格子定数の不整合を克服するためにバッファー層を導入して高品質の単結晶薄膜を作製することを試みた。この方法により質の良い薄膜を得ることに成功しているが、デバイス化に向けてさらに原子レベルでの界面制御が望まれる。また、Fe_3O_4-Fe_2TiO_4系でもPLD法による薄膜化に成功した。次年度はこれをより広範な組成範囲に展開する。これまでの成果は、高品質な室温フェリ磁性半導体薄膜の作製の観点から意義があり、今後デバイス化により省電力、高速のスピントランジスタやメモリが実現すれば、さらなる高度情報化社会への寄与は大きい。
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