研究概要 |
新規チタン酸バリウムBaTi_2O_5(BT2と略)は,転移温度Tcが470℃と高く,Tcでの誘電率はεb=30,000(単斜晶のb軸方向)と大きく,産業界で広く利用されているチタン酸バリウムBaTiO_3(BT1と略)に優る応用的可能性を秘めている。しかし,BT2は,1150℃以上でBT1とBa_6Ti_<17>O_<40>に分解するため,急冷法で小さな針状結晶が得られているにすぎず,また,通常のBaOとTiO_2を用いた固相反応にて,BT2粉体を合成することも難しい。本研究では,まずBT2の緻密セラミックスの合成を目指し,チタニウムテトライソプロキシドとバリウムジエトキシドを原料としたゾル・ゲル法を用い,650℃の低温で焼成することで,BT2ナノ粒子の合成を行った。さらに,放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて,20MPa・1000℃・5分の焼成条件で,相対密度96%以上の緻密セラミクスを焼成した。また,KFを僅か1%添加したBT2セラミックスにおいて,室温付近にピークを持つリラクサーを作り出すことができた。これらの成果をまとめ,Applied Physics Letters誌などに論文として報告した。しかし,まだグレイン制御技術が確立されておらず,誘電率の大きなb軸を配向させた緻密セラミックスを作ることが今後の課題である。次に,大型単結晶の育成のため,新たに坩堝降下機構をつけた電気炉を購入し,立ち上げ作業を行なった。また,既存設備の赤外線加熱のフローティングゾーン炉(FZ炉)による結晶育成も試みた。移動溶融帯フローティングゾーン法(TSFZ法)を新たに取り入れ,FZ法の場合より明らかに大きな単結晶を育成することができた。しかし,まだ実用的な大きさの結晶を育成するまでには至っていない。更なる結晶の大型化を目指し,坩堝降下炉での単結晶育成を本格的に進めていく。
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