新規チタン酸バリウムBaTi_2O_5は、転移温度T_Cが470℃と高く、転移温度での誘電率も30、000と大きく、産業界で広く利用されているBaTiO_3に優る応用的可能性を秘めている。しかし、BaTi_2O_5は、1150℃以上でBaTiO_3とBa_6Ti_<17>O_<40>に分解し、1350℃で融解するため、急冷法で小さな針状結晶が得られているにすぎず、また、通常のBaOとTiO_2を用いた固相反応にて、BaTi_2O_5の粉体を作ることも難しかった。本予算でのこれまでの研究により、Traveling Solvent Floating Zone (TSFZ)法での単結晶の育成、ゾル・ゲル法でのナノ粒子の合成、放電プラズマ焼成(SPS)法での緻密セラミックスの作製など、可能になってきた。本年度は、それらの成果を論文にまとめるとともに、強誘電体国際会議で報告を行った。また、SPS法という特殊技術を使わない通常焼成法にて緻密セラミックスを合成し、その配向を制御するためのスラリー化および厚膜作製技術について検討した。 まず、通常焼成法によるセラミックスの作製のため、融点が低くグレインの液相成長を促す酸化マンガンを焼結助材に選び、添加濃度や焼成温度を詳細に調べた。ゾル・ゲル法で作製したBaTi_2O_5粉末に、MnO_2を0.2~0.8wt%添加し焼成したところ、BaTi_2O_5が分解することなく1250℃まで存在できることを見出した。更に、1250℃での2回焼成により、相対密度95%以上の緻密セラミックスを作製できることを明らかにした。特殊な装置を使うことなく緻密セラミックスを焼成できるこの「Mn添加・2回焼成法」にて特許を申請した。BaTiO_3積層セラミックコンデンサーに使われているスラリーからの厚膜作製技術を真似て、Mh添加BaTi_2O_5微粉末をスラリー化し、1250℃で焼成することで圧膜をアルミナ板に作製した。誘電率などの電気的測定が可能な膜である。現在、詳しい評価を行っている。また偶然の成果ではあるが、BaTi_2O_5前駆体ゲルにおいて、室温で強い蛍光を見出し、特許申請を行った。
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