研究概要 |
産業技術の高度な発達に伴い、多くの産業分野で、熱膨張抑制に対する強い要請がある。本基盤研究では、ガラス系ゼロ膨張複合材料を中心とした従来材料では難しかった、精密加工など力学的負荷の大きなプロセス分野での利用をも可能にする高強度の汎用ゼロ膨張セラミック材料の開発を目指し、構成元素の種類やその比率の調整により熱膨張特性が自在に制御できる逆ペロフスカイト型マンガン窒化物を用いて、1)歪みや欠陥が入りにくく機能が安定する、2)作製プロセスが簡素で製造コストが低く抑えられる、という点で理想的な「単一物質ゼロ膨張セラミック材料」の開発に取り組む。平成20年度では、単一物質でゼロ膨張を示す、低コストのマンガン窒化物実用組成開発を達成し、窒素含有量が減るとともに低膨張化することを明らかにした。また、中性子回折実験により、Ge置換による体積変化の緩慢化が、Ge置換により誘起される局所構造歪みと密接に関連していることを突き止めた。さらに、逆ペロフスカイト型マンガン窒化物の一連の研究のなかで、Mn_3CuNが最大2000ppmに達する巨大磁歪を発現することを発見し、新しい機能材料創成への萌芽を得た。現在は、典型的な負熱膨張組成であるMn_3(Cu, Ge)NやMn_3(Cu, Sn)Nについて、ヤング率やビッカース硬度、曲げ強度など、セラミック材料としての基本的な機械特性評価を進めており、既に予備的な結果を得ている。機械特性評価は、ゼロ膨張組成も含め、来年度中に完了できると考える。
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