本研究は、カーボンニュートラルな循環再生可能資源である植物バイオマスを有効利用し付加価値の高い材料を生み出すことを大目的とする。具体的には植物バイオマスを原料に合成した架橋型ポリマーをマトリックス樹脂として合成し、高強度・高弾性率を有するバイオナノファイバー(セルロースナノファイバー)を強化材とする、高性能な新規バイオマスナノコンポジットの創生を目的とした。 研究実施計画に挙げた3項目についてそれぞれ次の成果を得た。(1)植物バイオマス由来架橋型ポリマーの高性能化:アルコール類との加溶媒分解により液化した木質バイオマス(アルコール液化木材)にグリシジルエーテル化を行い、液状エポキシ樹脂を合成した。脂肪族アルコールから芳香族アルコールへの変更およびバイオマス含有率増加により、耐熱性および室温弾性率の著しい向上を達成した。(2)植物バイオマス由来架橋型ポリマーの複合材マトリックスとしての成形性評価:合成した芳香族アルコール液化木材エポキシ樹脂をセルロース繊維不織布間に真空樹脂注入法を用いて含浸することにより、複合材料成形が可能となることを評価・確認した。(3)セルロースナノファイバー/植物バイオマス由来架橋型ポリマー複合材の高性能化:セルロース繊維不織布単独および木材エポキシ樹脂単独に比較して、両者からなる複合材の弾性率や強度は顕著に高く、高性能な新規バイオマスコンポジットを得ることに成功した。
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