炭素繊維強化複合材料の高比強度を活かした、高速回転体を開発し、電力用貯蔵用フライホイールや遠心分離機への適用を検討してきた。H20年度は、フライホイールの特性として重要なエネルギー密度の更なる向上を実験計画法と応答曲面方法による最適設計を行い、外径Φ300、内径Φ30の円盤において、214hw/kgの最大値(最適値)を得た。CFRP製円盤とともに回転軸とのハブを用いないハブレス接合を検討した。内径の小さい円盤に外径の小さい軸をハブを不要した構造とすることにより、破壊周速の向上を行い、その内容について特許出願を行った。これらの円盤とその接合方法の理論的な検討結果を踏まえ、また織物メーカの現有技術を考慮して、現実的に製作可能な織物の検討を行い、外径Φ300、内径Φ40での円盤織物を試作した。設計上この織物のエネルギー密度は120hw/kg、周速は1520m/sであり、設計周速としては、世界最高速の回転体が得られた。この円盤織物を金型内において樹脂の注型を行うために、成形プロセスに関する試作実験を行った。3次元織物は繊維が密に空間に充填された構造であるため、細部に渡り樹脂を含浸させ充填させることができるかが重要な課題であった。このため、金型内の温度、圧力および樹脂の注入位置および金型外へ余分な樹脂の排出方法において実験を行った。実験は樹脂の金型内での流れを可視可するために片側が透明なアクリル製の型を用いた検討を含めた。この結果、温度、圧力および樹脂の注出入位置においておおむね最適な条件をうることができた。この条件下で、織物への注型を行い、樹脂を加熱硬化させて、CFRP製円盤を得た。この円盤に回転軸を取り付けるために削り加工を行い圧入にて組み付け、外径Φ280の試験体を得た。円盤の回転剛性試験を行い、20000rpm時における回転歪みを計測した。ひずみは、予測より大きくなった。ひずみが大きいことは、円盤の弾性率が発現されていない可能性があり、これを確認するために円周方向の弾性率を計測するためのリング状試験片を作製して、弾性率を計測した。この結果、円盤の高さ(厚み)の大きい内径側において、弾性率が小さくなっていることが明らかとなった。このため、リング状試験片の断面観察を行った。断面観察では、厚みの大きい位置の中央部において、繊維の空間充填率が小さいことが分かった。原因として、製織時にジグで上下面から押さえる力が中央部にはおよんでおらず、このため空間充填率は小さくなり、弾性率も低下したと判断した。試作した回転供試体の回転破壊試験を行った。試験は、外部機関を利用した。回転試験に先立ち、回転軸と円盤面の垂直度を計測した。計測の結果、回転軸は円盤面に対し、約0.1°傾いていることが分かった。回転試験を行うと30000rpm以上の高速回転では、軸と円盤面の傾きに起因する軸振動が急激に大きくなり、試験装置の許容範囲を超えて試験を継続することが不可能となった。試験を中止した回転数は、31264rpmであり、その周速度は、458m/secであった。現在、軸と面との傾きを除去する機械加工を行っており、今後は追試験を行う予定である。
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