研究概要 |
作製時のチャンバー内の雰囲気圧力を変えることで過冷却液体の低温領域での核生成制御を行い、新しいZr_<65>Al_<7.5>Ni_<10>(Cu, Pd)_<17.5>バルク金属ガラスを作製した。これらの合金の圧縮変形挙動を調べた結果、一般のバルク金属ガラスよりも優れた塑性変形能を示すことがわかった。その優れた塑性変形能を発現するメカニズムとして、変形帯の移動にともなって動的な微細結晶析出が起きることを確認している。このような動的微細構造変化は、安定な二十面体局所構造に代表される局所不均質構造とガラスの過冷却液体状態の意図的な不安定化の相乗効果に起因するものと考察した。特に後者の効果を発現するためにはPdの添加が必要不可欠であるが、その濃度は5原子%で有効であることを見いだした。さらに種々の濃度による機械的性質の変化を系統的に調査し、Pd濃度が5〜17.5原子%の広い範囲でバルク金属ガラスの作製が可能であり、またそれらはいずれも優れた機械的性質が発現することを明らかにした。ただPd濃度によって変形誘起のナノ結晶化挙動に差異が認められた。すなわち、Pd濃度が高いほど析出結晶相の微細化や析出領域が狭くなることを見いだした。この原因として過冷却液体の安定性が異なるためであると考察した。一方貴金属元素添加によって安定化すると考えられる二十面体局所構造生成の起源を考察するため、Zr-PdやZr-Pt2元ガラス合金の局所構造解析を行い、Zr-PdではZr周囲に、Zr-PtではPt周囲にそれぞれ安定な二十面体局所原子配列が生成することを考察した。このことから、Zr-Al-Ni-Cu-Pd金属ガラスの安定化不均質構造の起源がZr-Pdの強い化学的相関によってZr周囲に生成する二十面体局所構造によるものと推察することができる。
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