研究概要 |
2種類の原子層の積層構造からなるL1_0型規則合金には、その結晶の一軸性に起因した強い磁気異方性を有する材料が多く存在する。中でも3d遷移金属と貴金属の組み合わせからなるFePt、CoPtあるいはFePdなどは、非常に大きな一軸結晶磁気異方性を示し、ナノサイズ化の進む磁気ストレージデバイスおよび高性能永久磁石の次世代材料として期待されている。しかしながら、この大きい結晶磁気異方性を示す既存のL1_0型規則合金は、希少元素であるPtあるいはPdを多く含有している。そこで、本研究では、単原子層制御によりFe, Co, およびNiというクラーク数(地表の元素質量%)の比較的高い材料からL1_0型規則合金を人工合成し、大きな一軸結晶磁気異方性の実現を目指す。本年度は、特にL1_0-FeNiの創製に特化して研究を進めた。MgO(001)基板上にCuの緩衝層の成膜し、FeNi合金を成膜したところ、エピタキシャル成長を確認した。X線回折の測定から結晶構造の成膜温度依存性を調べた結果、全ての成膜温度において2θ=51°付近にFeNi層によるものと考えられる002ピークが観測されたが、L1_0-FeNiの形成を示す001超格子ピークは明瞭には観測されなかった。また、RHEED像のストリーク間隔から面内の格子定数の変化を調べた結果、1原子層日では格子定数は大きく、層厚が増えるにつれて徐々に小さくなり約20原子層以降でほぼ一定値を示すことが分かった。現在、緩衝層に用いる材料を工夫することによりL1_0-FeNi層の垂直磁気異方性を増加させる試みを行っており、更なる成長条件の最適化が必要であると考えられる。
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