研究概要 |
高靭性鍛造TiAl基合金の開発のための組織設計法の指導原理を構築することを目的に,Ti-Al-M三元系合金を基本としてこれにさらに置換型及び進入型元素を添加したTi-Al-M_1-M_2四元系合金を溶製し,以下の成果を得た. (1)置換型元素の複合添加と熱間鍛造性の評価 1200℃以上においてβ-Ti相が存在し,且つ,β+α→α→β+γ反応経路を示す3元系合金のAl濃度は42at%近傍である.M_1としてVを選定し,Ti-42Al-8V合金を基本組成としてこれにM_2(Nb,Cr,Mo)を添加して8Vに相当する合金を溶製する場合,M_2のV当量K_<V/Mo>は,Ti-Al-V及びTi-Al-M三元系状態図におけるにおけβ+α+γ三相共存領域から,それぞれK_<V/Nb>=1.0,K_<V/Cr>=2.0,K_<V/Mo>=4.0であることを明らかにした.また,M_1にNbを選び,Ti-(40-42)Al-(3-9)Nb合金を基本組成としてこれにM_2(V,Cr,Mo)添加する場合のM_2のNb当量K_<Nb/M2>はK_<Nb/V>=1.0,K_<Nb/Cr>=1.8,K_<Nb/Mo>=3.8である.これらの当量値を用いて種々の4元系合金を溶製し,総ての合金が熱間自由鍛造が可能であることを実証した.なお,状態図から求める当量は若干過大評価側にあり,複合添加はβ-Ti相を安定化させる負の相互作用を有することを見出した.これらの知見から特許を出願した. (2)置換型と侵入型元素の複合添加と組織形成 置換型固溶元素としてNb,侵入型固溶元素としてCを選び,Nb濃度を固定してAl及びCを変化させた数種類の合金,Ti-(42〜47)Al-7Nb-(0〜1)C(at%)を溶製し,相平衡及び組織形成に及ぼす炭素の効果を調べた.その結果,固溶炭素はβ相に対してα-Ti相を著しく安定化させ,β相領域を高温側にシフトさせること,また,α相に対してγ-TiAl相をも安定化させ,低Al側ほどα-transus温度を上昇させること,さらに,α→γ変態によるラメラ組織の形成を遅滞させる効果を持つことを見出した.一方,炭化物は1000℃以下において,先ず準安定のTi_3AlC(p-type)が析出し,その後安定相であるTi_2AlC(h-type)に遷移し,その析出のノーズは約900℃にあることを見出し,この合金におけるTTT図を作成した.また,得られた知見から,本合金を微細なラメラ組織とし,そのラメラ界面に炭化物を析出させる組織制御法を提示した.
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