研究概要 |
5族金属(V, Nb, Ta)は高い水素透過能を有し、水素製造装置用分離膜材料として期待されている。ただし、酸化に弱いため水素透過性貴金属であるPdの極薄膜で表面を保護しなければならないが、水素製造に必要な高温では下地5族金属とPdが反応し保護性能が消失する。本研究の目的は4族金属(Ti, Zr, Hf)の炭化物・窒化物を中間層として挿入することにより両者の反応を防止し、Pd被覆5族金属水素透過膜に高温耐久性を付与することにある。 昨年度までに、アークプラズマガンを用いて4族金属窒化物を成膜する条件を大まかに確定すると共に、Taを基板、厚さ70nmのHfN膜を中間層とするPd/HfN/Ta試料を作製し、HfN層が水素透過性を有することを世界に先駆けて見出した。今年度は中間層を有しないPd/Ta試料と高温耐久性を詳細に比較すると共に、加熱後の試料の表面状態等を分析し、Pd/TaおよびPd/HfN/Taそれぞれの界面における物質移動を詳細に調べた。Pd/Ta試料は、973 Kに加熱するとほとんど水素透過性を示さなくなった。加熱後のPd/Ta試料の表面は、Pd膜の多孔質化とPd中のTaの外方拡散によりTa酸化物で覆われており、これが透過障壁となっていることがわかった。一方、同条件で加熱してもPd/HfN/Ta試料の水素透過性は劣化せず、Taが表面に現れることもなかったので、HfNは高温耐久性を付与するための中間層物質として有効であると結論した。ただし、深さ方向分布測定の結果よりPdの一部がHfN層中を通ってTa基板中へ溶解していることがわかり、さらに耐久性を向上させるには、このPdの内方拡散を抑制する必要があることがわかった。この目的を達成するため、Pdの内方拡散速度を支配すると考えられるいくつかの因子について検討し、基材Taの微細組織制御が有効なことを見出した。
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