研究概要 |
ニオブ(Nb)やバナジウム(V)などの5A族金属は、水素の溶解度と拡散係数がともに高いため、Pd-Ag合金に代る次世代水素分離膜への応用が期待されている。しかし、これらの金属は実用的な水素圧力条件において多量の水素を固溶してしまい、水素脆化によって著しく劣化することが問題である。水素の分離膜として用いるためには、第一に水素脆化を抑制するための材料設計が必要である。 本研究では、5A族金属合金の水素脆性を定量的に評価し、脆化の条件を明確化するとともに、その改善のための指針を得る。高い水素透過能と耐水素脆性という相反する要求を同時に満たした水素分離膜合金を開発することを目的とする。 純ニオブおよび種々のニオブ固溶体合金のPCT測定,水素雰囲気中その場破壊試験および水素透過試験を行い,水素透過能および機械的性質と固溶水素濃度との間の関係を定量評価した。得られた実験結果より,ニオブ系水素透過膜合金を設計するための指針を検討した。 水素雰囲気中その場破壊試験の結果より,573K〜773Kでの純ニオブの延性-脆性遷移水素濃度はH/M=0.3付近にあり,固溶水素量をH/M=0.3以下に抑えることにより,純ニオブは水素雰囲気中でも延性破壊を示すことが明らかとなった。 これらの結果に基づいて、ニオブ系水素透過膜合金を設計するための指針を提唱した。すなわち、固溶水素濃度を低下させることによって,ニオブの耐水素脆性を改善すると同時に、高い水素濃度差ΔCが得られるように合金設計を行う。この指針に基づいて、水素の溶解度と耐水素脆性に及ぼす合金元素の影響を系統的に調査した。
|