研究概要 |
室温および850℃にて圧縮変形を行い、その後、マルテンサイト変態点以上に加熱することにより、残留歪みがどれだけ回復するか(形状記憶効果)を調べた。その結果、室温変形では最大0.6%の回復歪み、850℃変形では最大2%の回復歪みを示した。大きな回復を示したのは、Ti-12.5Pt-37.5IrとTi-25Pt-25Irであった。これは、これまでに見いだされてきたRuNbなどの高温形状記憶合金に匹敵する回復歪みであり、Ti(Pt,Ir)が高温形状記憶合金として有望であることを示している。 高温X線装置を用いた実験により、Ti(Pt,Ir)の1300℃まで結晶構造を明らかにした。その結果、マルテンサイト変態温度以上ではどの組成でも、TiPtと同様にB2構想であることが明らかとなった。また、マルテンサイト変態以下のB19構造の温度に対する格子定数変化を明らかにし、B2→B19変態による体積歪みを計算した。TiPtは体積歪みが2.5%となり、通常使われるTiNiより大きいことがわかった。そのため、変態中に不可逆な歪みが導入され、形状記憶効果が小さくなることが明らかとなった。Irを添加することによって、体積歪みは最大4%と大きくなったが、Ir添加量がさらに増加すると体積歪みは小さくなった。体積歪みが大きな組成の合金が大きな形状記憶効果を示したが、通常、大きな体積歪みは永久歪みを導入するため、形状記憶効果を妨げる。Ir添加による格子定数の変化を詳細に調べた結果、比較的大きな形状記憶効果が発現する組成は、結晶構造が斜方晶から正方晶に近い構造に変化し、その結果、マルテンサイト双晶界面の移動が容易になっている可能性があることを示唆した。体積歪みの効果だけでなく、結晶構造の変化に伴う双晶界面移動度が形状記憶効果に大きな影響をおよぼしていることを明らかにした。
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