有機-銀複合ナノ粒子による金属の接合では、有機物により金属表面の酸化皮膜が還元されるため、炭素より酸化物標準生成自由エネルギーの大きい金、銀、銅との金属接合が可能であった。接合温度を200〜400℃と変化させ、有機-銀複合ナノ粒子を用いて銅、金を接合し、引張試験により接合強度を評価した結果、225℃以下では接合性は得られなかったが、250℃以上では接合温度の上昇に伴い強度は上昇し、400℃では50MPa以上の高強度を示した。250℃での破壊形態は、有機物の分解・排出が不十分であり、未焼成銀領域が多く存在していた。一方400℃での破壊形態は、ほぼ全域白色の焼成銀中で破壊していた。このことから、有機物の残留は接合の阻害要因となり、250℃以下では十分に有機物を排出できないが、400℃では有機物はほぼ排出され、銀層の焼成・緻密化が進行して強固な継手が得られることが分かった。また、界面での相互拡散挙動について調査するため、界面の組成分析を行った結果、被接合金属種に関わらず界面での原子の相互拡散はほとんどなかった。これは、接合温度が銀、金、銅の融点に対して十分低いためと考えられる。次に、金、銅に対する接合界面の透過型電子顕微鏡による詳細な観察結果から、本接合法での界面接合機構を検討した。その結果、銀/金界面では、銀ナノ粒子が金基板に対して焼結する際、250℃の低温から金基板の結晶方位に再配向してヘテロエピタキシャル層を形成することで接合を達成していることが分かった。一方、銀/銅界面では、特定の方位関係は認められなかった。これは、銅は金と違って銀と格子定数が大きく異なることと、接合に際して、酸化皮膜の分解が必要なことが起因していると推察された。しかし、金、銅どちらの場合も界面での整合性は得られており良好な界面接合が達成され、これにより高い接合強度が得られることが分かった。
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