研究概要 |
本研究は,溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,アーク溶接プロセスにおけるプラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることを目的としたものである. 平成20年度では,プラズマイメージングシステムを用いて,静止GTA溶接プロセスにおける溶接アーク現象を分光デジタル動画として取り込むことにより,溶融池表面から蒸発してアークプラズマ中に混入する金属原子および金属イオンの動的変化を観察することに成功した,特に,ステンレス鋼を溶接した場合には,合金元素である鉄,クロム,マンガン等が溶融池表面から同時に蒸発してプラズマ中に混入するが,そのダイナミックな挙動をそれぞれの元素ごと,かつ,原子とイオンを分離して観察することに成功した.この結果,ステンレス鋼の静止溶接においては,溶融池表面から主として鉄,クロム,マンガンが蒸発するが,クロムとマンガンはプラズマの旋回流動によってアーク柱を迂回しながらタングステン電極まで到達し,その後,陰極ジェットに乗ってプラズマ中心部に輸送されることが明らかになった.一方,鉄は,ほとんどが陰極ジェットによってアーク外周辺へ吐き出され,プラズマの旋回流動によってタングステン電極の方へ輸送されないことが明らかになった.一方,シールドガスであるアルゴンの原子スペクトルを同じシステムを用いて観察し,Fowler-Milne法を利用することにより、プラズマ温度分布の動的変化を実験的に求めることに成功した.
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