研究概要 |
錯体重合法によりSm, Eu, Gdを含むオキシカーボネイトまたは酸化物を合成し、この前駆体からCS_2ガス硫化により様々な化学量論組成及び非化学量論組成のTh_3P_4型の多元系硫化物粉末を合成した。Sm(NO_3)_3、Eu(NO_3)_3、Gd(NO_3)_3の中から2種類もしくは3種類を蒸留水に溶解し差水溶液に、クエン酸、エヂレングリコールを順に添加することによりポリマー錯体を合成した。このポリマー錯体を乾燥させ、焼成することにより希土類オキシカーボネイトまたは酸化物とした。次に、これらの前駆体をCS_2ガス硫化法により硫化し、さらにパルス通電焼結装置を用いて焼結した。硫化後の合成粉末のXRD結果から、錯体重合時のEu(NO_3)_3質量比が10%以下ではγ相とα相、50%以上ではγ相とEuSが同定されたのに対し、20〜50%では立方晶Th_3P_4型のγ相の単相が得られた。また、高温域熱電材料として期待される希土類三二硫化物について、結晶粒微細化により熱伝導率の低減を図るため、相変態を利用した微細化法について検討した。Ln_2S_3(Ln : LaからSm)が斜方晶のα相から正方晶のβ相を経て立方晶Th_3P_4型のγ相に相変態するめに対し、Ln'_2S_3(Ln' : Gd, Tb)はα相からγ相に相変熊する。これまで、高酸素濃度のγ相のPrGdS_3合成粉末を焼結すると、焼結中にα相からPr_5Gd_5S_<14>Oと推定されるβ相を経て微細なγ相に相変態し、結晶粒が微細化することを見出してきた。今年度は、様々なCS_2ガスを用いた硫化条件やその後のアニール条件で作製したPrGdS_3とNdGdS_3を用意し、それらの焼結体の結晶粒微細化を達成するための最適条件を求めた。錯体重合法を用いPrとGd、NdとGdをそれぞれ含むオキシカーボネイトを合成し、次いで1273K、28.8ksでCS_2ガス硫化することによりPrGdS_3およびNdGdS_3を合成した。焼結実験の結果、アニール後の合成粉末中の不純物酸素量が多い場合、焼結時の線収縮率曲線において収縮の停滞が観察された。この停滞前後で焼結を中止し、焼結体のXRDを行ったところ、停滞前ではα相が同定され、停滞後はα相の他にβ相が同定された。主にこのような停滞が確認された焼結体について、γ相の結晶粒微細化が確認された。
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