研究概要 |
昨年度までに、高酸素濃度のγ-PrGdS_3合成粉末を焼結すると、焼結中にα相からPr_5Gd_5S_<14>Oと推定されるβ相を経て微細なγ相に相変態し、結晶粒が微細化することを見出してきた。本年度は、PrGdS_3の他にα,β,γに相変態するNd,Smとα,γに相変態するGdを組み合わせたNdGdS_3,SmGdS_3を用意し、それらの結晶粒微細化を確認するとともに、微細化した焼結体の熱電特性を評価した。アニールしたNdGdS_3,SmGdS_3合成粉末の焼結体においても、PrGdS_3と同様に結晶粒の微細化が確認された。アニールなしのNdGdS_3,SmGdS_3焼結体の結晶粒径は約40μmと30μm、アニールした焼結体のそれらは約6μmと5μmであった。しかし、NdGdS_3,SmGdS_3の焼結時の線収縮率曲線には、PrGdS_3の場合に観察された収縮停滞は確認されなかった。β相の確認は焼結中の相変態速度に依存するものと推定した。PrGdS_3,NdGdS_3,SmGdS_3それぞれのゼーベック係数(S)、電気抵抗率(ρ)から出力因子(P=S^2/ρ)を求めた。アニールした合成粉末の焼結体はアニールなしの場合の焼結体に比べ、Sとρが減少し、結果としてPの増加が確認された。なかでも最もPの値が高いPrGdS_3(P=~250・・μw/K^2m at 600K)について熱伝導率(κ)を測定し、無次元性能指数(ZT=S^2T/・ρκ)を求めた。アニールした場合、Pの増加と併せて焼結体のκが減少し、その結果ZTが増加した。れまで、NdGd_<1.02>S_3において950KでZT=0.51が確認されていることから、結晶粒の微細化がなされた焼結体において同時にランタノイド収縮を利用しながらキャリア濃度の最適化が達成されれば一層のZTの向上が期待される。 立方晶Th_3P_4型の希土類硫化物には稀なP型半導体であるEuGd_2S_4のGdサイトの一部を価数揺動体であるSmで置換したSmEuGdS4に引き続き、今年度はTbで置換したEuGdTbS_4を合成した。クエン酸錯体重合法によりオキシカーボネートを合成し、続くCS_2ガス硫化によりそれぞれの単相合成を可能にした。さらに、高温域の熱電特性の測定から、Sm置換に対するTb置換の優位性を確認した。
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