予備実験においてβ-FeSi_2の生成が確認された結果をもとにし、NaCl-KCl-FeCl_2系溶融塩と単結晶シリコンウェハとの反応を、種々の条件で試み、製膜方法の最適化を試みた。 塩化物特急試薬を混合し、アルゴン雰囲気下で作製したNaCl-KCl-FeCl_2系溶融塩数gと、10mm四方程度のSi(100)または(111)ウェハを高純度グラファイト坩堝に入れ、所定温度(主に900℃)で5〜64時間保持し、ウェハ表面の反応生成物の評価を行った。その結果、FeCl_2が0.02mol%以下の低濃度では、β-FeSi_2のみの生成が確認され、FeCl_2とSiの交換反応2FeCl_2+5Si→+2β-FeSi_2+SiCl_4が起きていることが、X線回折およびSEM観察により明らかになった。なお、実験後の溶融塩の分析を行った結果、溶融塩中のFeCl_2の大部分は消費されており、全体的に均一な膜が得られない場合が多かった。一方、FeCl_2濃、度が0.1mol%以上では溶融塩との界面がFeSi層に、Si基板との界面はβ-FeSi_2層となり数μの多層膜が得られた。 また、多層膜については、700〜900℃数時間で熱処理を行うことで、Si基板の反応(例え、FeSi+Si→β-FeSi_2)を促進し、平滑で均質なβ-FeSi_2膜の生成が確認された。一部の得られた資料については、TEM観察、電気物性測定を行った。
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