平成20年度は、前年度と同様のNaCl-KCl-FeCl_2系溶融塩を用いて、β-FeSi_2(s)薄膜の最適創製条件を明らかにした。なお、本年度は、過塩素酸マグネシウムで脱水、ソーダライムで脱CO_2を行ったのち、550℃のマグネシウムチップを通して脱酸を行ったアルゴンガスを反応装置内に導入することで酸素の混入を極力抑えることができた。また、反応容器内にスポンジチタンを共存させ、さらなる酸素除去を行った。生成物層の評価はX線回折および断面のSEM-EDX分析を用いて行い、溶融塩の組成、反応時間、反応温度について種々の条件で膜の作製を試みた。 一方、得られたβ-FeSi2薄膜が太陽電池や熱電素子として機能するために非常に重要な、光学特性、電気特性の評価を行った。熱処理6hを施した試料に対して電気抵抗率の温度依存性を測定した結果、温度の上昇と共に電気抵抗は小さくなり、室温では文献値で得られているFeSi_2のものとほぼ同等であった。しかし、高温では報告値より抵抗値はかなり小さい値を示したが、本試料がSi基板上に作製されたためと考えられる。さらに、翌年度予定しているCo添加効果についても一部確認を行ったところ、Coの添加で電気抵抗の大幅な減少が見られた。これはCoをβ-FeSi_2にドープすることにより同層中のキャリア密度が増加したためと推察される。 光学特性については、その吸収スペクトルからバンドギャップが0.75eVと見積もられたが、既報告値よりもやや小さい値であった。次年度は、測定精度の向上とCo添加による影響を明らかにする予定である。
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