研究概要 |
亜鉛,銅,鉛製錬の電解工程においては,電解液に高分子化合物を添加すると,陰極電位が卑に移行し,電析物の結晶粒が細かくなる。しかし,これらの高分子添加剤は,連続電解の際,液中で分解しその効果がなくなるだけではなく,電析物の純度および電解液の電導度に悪影響を及ぼす。そのため,添加剤の経時劣化の状況を明らかにすることは実用上重要である。そこで,Znの連続電解におけるゼラチンの分子量の経時変化およびゼラチン,PEGの添加効果の経時変化を調べ以下の結果を得た。Znの連続電解を行った場合,ゼラチン,PEG添加によるZn電析電位の分極は時間の経過とともに減少した。分極に対する添加剤の効果は,分子量に大きく依存し,またPEGの方がゼラチンより長く持続した。一方,電解液中のゼラチンの分子量は電解時間の経過と共に低分子量域に移行していることが実証された。ゼラチンの分子量とZn電析電位には相関関係があり,電解時間の経過に伴いゼラチンが分解して分子量が低下すると陰極電位が貴な方に移行することが確認された。電解液を放置した場合においても,ゼラチンの分子量は時間の経過と共に低下し,また分極効果も減少した。連続電解時の電析Znの表面形態,結晶配向性は,陰極電位の経時変化の傾向と良く対応し,陰極電位の分極が大きくなるほど,その結晶粒径が小さく(1010)面に優先配向した。しかし,添加剤の経時劣化により分極が小さくなると,Znの形態,結晶配向性は添加剤を含まない液から得られたものに近づいた。以上のように,高分子添加剤の経時劣化は,その分解に起因するものであり,添加剤の分子量分布,電析Znの陰極電位および表面形態により評価することができた。
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