研究概要 |
本年度は、以下に示す研究を行い、過冷却液体状態の構造・物性について明らかにした。 1)過冷却液体状態の二元合金系の熱物性計測 静電浮遊法と液滴振動法を組み合わせることにより、ジルコニウム-ニオブ合金液体の全組成範囲の粘性・表面張力・密度を測定し、液体合金内の化学結合の有無や液体構造との関連を調べた。ジルコニウム-ニオブ合金の場合、密度の組成依存性については純粋成分の線形則よりも正に偏倚するが、粘性・表面張力はほぼ直線的に変化することが明らかになった。これらより、この合金系の特徴が剛体球の混合により近似的にあらわしうることが推察された。また最大過冷却度は液相線下約200Kに分布し、その組成依存性はほぼ一定であることが明らかになった。 2)放射光を用いた過冷却液体金属の構造測定と原子間ポテンシャルの導出 Spring-8の放射光を用いた高温液体金属の構造解析を試みた。ハフニウム,ニオブ,ジルコニウムなど高融点金属液体の静的構造因子の測定に成功した。また、得られた構造因子から液体論の方法により原子間ポテンシャルを求め、それを用いた古典分子動力学法により粘性係数などの物性を計算した。ジルコニウムの粘性係数については、実験結果と非常に良い一致を示した。 3)過冷却液体シリコンの原子ダイナミクスの解析 SPring-8の高分解能X線非弾性散乱装置により測定した過冷却液体シリコンの動的構造因子に対して、DHOモデルや粘弾性理論による解析を試みた。シリコンの過冷却液体状態では、S(Q)の第一ピーク近傍に於いて動的構造因子の半値幅が小さくなる傾向を示すことが明らかになった。
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