研究概要 |
近年,数十ナノ〜ミクロンのメゾスコピックな有機微粒子(微結晶)が機能性塗料,光電子材料,化粧品等の広い分野に活用され,製品の高機能化,高性能化に役だてられている.ところで、メゾスコピック微粒子製造法には,粉砕などの固相法,ゾルゲル法などの液相法,CVDなどの気相法があるが,溶媒残留や大きな乾燥エネルギー、さらに粒子間凝集が課題として認識されている。そこで,特にグリーンケミストリーの観点からE-FACTORを極小化できる製造法が要望されており、その一候補として,超臨界二酸化炭素(scCO2)を用いた微粒子(微結晶)製造法がある. 本研究では、シャンプーの光沢付与剤として用いられるエチレングリコールジステアレート(EGDS)を対象に、試料溶液を二酸化炭素中に噴霧して貧溶媒化するASES法(Aerosol Solvent Extraction System)について実験条件(温度・圧力・溶液流量・溶液濃度)と生成結晶形状との相関関係を定量化するとともに、結晶生成メカニズムおよび形状制御性について考察した。 実験では、EGDSを所定量、溶媒であるシクロヘキサンに溶解させ試料溶液とした。次に所定温度に保持した高圧セルに、二酸化炭素を所定圧となるまで圧入した後、試料溶液をセル上部のキャピラリーより定流量で注入するとともに、二酸化炭素も送液した。所定量のサンプル溶液注入が完了後、二酸化炭素のみを30〜60分セル内に流通させて溶媒を除去した。その後、系内を減圧し、セル内部より結晶を回収した。回収した結晶は重量法により収率を、レーザー顕微鏡による結晶形状の観察から平均結晶径(=長径)、アスペクト比(=長径/厚さ)および表面粗さを算出した。得られた結果を比較すると、高温・高圧、低溶液流量条件とすることでアスペクト比が大きく表面粗さの小さい結晶が高収率で得られることが示された。また、溶液濃度および導入溶液量を調節することで目的とする結晶径が得られることが示唆された。
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