本研究の目的は、イオン液体相と超臨界CO2相の2相系を用いた抽出、分離システム開発を目指すものであり、基礎的知見となるイオン液体-CO2-芳香族化合物3成分系に関する相平衡測定および相関式開発を行った。相関には状態方程式を用いることにより分配係数、分離係数の温度、圧力効果の推算を目指した。 イオン液体-CO2-芳香族化合物3成分系に関する相平衡は、超臨界クロマト法による無限希釈分配係数の測定で行われた。イオン液体に関しては4種類、溶質としては芳香族化合物系に関し系統的に構造変化をさせた5種を用いた。溶質種の依存性に関しては、溶質の蒸気圧にしたがって変化することが確認された。イオン液体種の依存性に関しては[BF4]アニオンは[PF6]アニオンと比較して極性物質と高い親和性を示し、アニオンの表面電荷の違いにより親和性に違いが生じたと考えられる。続いて、前章までで決定されたパラメータを用いて状態式による相関を行った。Sanchez-Lacombe状態式による相関の結果は無限希釈分配係数の温度、圧力の傾向を良好に表現可能であることが示された。また、本相関式を用いることによって異種分子間における分離係数の温度、圧力変化も推算可能であることが示された。応用研究として、キラルイオン液体による光学異性体の分離に関する研究を行った。測定手法は上記と同じ超臨界クロマト法により、分離係数の評価を行った。現段階においては光学分割を示すキラルイオン液体の構造の同定はできず、今後、官能基の相互作用に着日した構造探索が必要である。
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