本年度は、ナノピラー内での毛管凝縮現象の速度を定量的に評価する方法を検討し、毛管凝縮現象のサイズ依存効果を検討した。 ナノピラーとして、毛管半径が245nm(群1)、273nm(群2)、340nm(群3)、405nm(群4)を作製した。それぞれピラー高さは、250nmでピラー間隔と・ピラー断面積は、150ミクロン角のピラー作製領域中のナノ空間体積が約620fLとなるように調整した。この気体で満たされたナノ空間が、液体で満たされた割合を定量的に評価する方法を様々検討した。その結果、照明光を落射方向から斜入射し、凝縮前後での顕微鏡画像をCCDで記録し、その輝度変化から相転移により液体が満たされた割合を計測することにはじめて成功した。この観察方法を用いて、水をナノピラー近傍のマイクロチャネルに導入した後の様子を約15分間記録した。100℃において実験したところ、水導入後100秒から230秒の誘導時間の後、凝縮が始まる現象がみられた。凝縮が始まってから全体が液体で満たされるまでの凝縮速度は、3から11fL/sであった。25℃で実験したところ、誘導時間は、凝縮速度は10秒から70秒であり、凝縮速度は、11から74fL/sであった。誘導時間はナノ空間のサイズが大きくなるほど、ながくなった。このことは、凝縮核形成と成長により、液体がピラー間にブリッジを形成する時間に対応すると考えられる。また、液体凝縮速度はサイズが大きくなるほど遅くなった。サイズが小さいほど毛管凝縮効果による過飽和度が高くなることと、よい一致を示していると考えられる。100nm程度の大きさの空間で、相転移現象の速度論を定量的に確かめた研究はこれまでになく、基礎化学的にも重要な結果と言える。実用面においても、ナノ・マイクロ化学プロセスにおける相転移制御の指針が得られたことが本研究の大きな成果と言える。
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