研究概要 |
本研究では,ナノ〜サブナノ細孔における液相系の透過機構の解明と高度分離システムへの応用を目的とし,以下を具体的な研究実績とする。 (1)細孔構造および表面特性を制御したナノ多孔性膜の作製 これまでに製膜実績のあるSiO_2,TiO_2を用いて,ゾルーゲル法により平均細孔径0.5nm〜5nmを有する多孔膜の作製を行った。有機無機ハイブリッド膜は,セラミック多孔膜をまず作製した後にシランカップリング剤を用いて細孔内表面の疎水化を行うpost-modification法と,疎水基を有するアルコキシドを用い疎水ゾルを調製するin-situ法によった。 (2)ナノ多孔性膜および膜材料の特性評価 膜細孔径のナノ細孔評価として,ナノパームポロメトリー法を用い0.5〜50nmの細孔径を測定した。水蒸気は疎水細孔では毛管凝縮できないのに対して,ヘキサンの表面張力はセラミックの臨界表面張力より小さいため,セラミック表面で凝縮可能である。両者の比較を行なうことで,細孔径とともにナノ細孔の親疎水性を定量的に評価できる。疎水ゾルを用いて細孔径1nmの疎水化シリカ膜の作製に成功した。 (3)透過性評価と分離システムへの応用:ナノ制限空間のダイナミクス 細孔中の溶液透過は細孔径の大きな場合はHagen-Poiseuille式に従う粘性流支配である。粘性流支配であれば,分子種や透過温度にかかわらず,透過係数L_pと粘度μの積であるL_pμは一定となることから,透過機構を判断できる。ナノ細孔を有するセラミック膜を用いた場合,温度0〜100℃において,水などの極性溶媒の透過特性を検討した結果,L_pμは一定とならず,温度とともに増大することを明らかとした。
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