研究概要 |
申請者らの新規電極構造体を有する直接メタノール燃料電池では,多孔質体を用いた物質移動規制により,メタノールクロスオーバーを防ぎ,従来20%程の燃料利用率を70%以上に増大させ,高濃度メタノール(〜100%メタノール)を高効率で利用できる。一方,高濃度メタノールの条件下では,中間生成物が生成、排出が予想され,効率向上の妨げになる。中間生成物の生成は,電極界面雰囲気の組成に関係し,多孔質体および電解質膜を通しての物質移動に影響されると予想される。本研究では,本電極構造体に対して電極外表面での物質移動流束測定に加え,電極構造体内部の雰囲気組成を直接連続モニタする世界初の試みにより,電極構造体での物質移動状況と,中間生成物との関係を解明することを目的とした。まず,電極構造体の外側での中間生成物の生成物とその生成速度を異なる物質移動抵抗を持つ電極構造体に対して詳細に調査した。中間生成物としてはホルムアルデヒド,ギ酸メチル,および微量ながらギ酸が確認された。これらの生成状況は,電極構造体の物質移動抵抗によって大きく異なった。高濃度を用いても物質移動規制が強く働いている場合(メタノールクロスオーバーが小さい場合)は中間生成物の生成は少なく,またホルムアルデヒドが主生成物となった。物質移動規制が十分でなく,高濃度下でクロスオーバーが生じる状況下ではギ酸メチルが他の10から20倍にも多く生成することが分かった。この結果は電極界面雰囲気のメタノールおよび水の濃度が関係しているものと予想された。次に,購入した質量分析器を用いて電極構造体内部のガス雰囲気を直接モニターするための電極構造体の調整と質量分析のための検量線作成を行なった。その結果,電極構造体内部の主要ガス成分の濃度を直接,連続モニターすることに成功した。今後,電極構造体内部と外部の同時定量を行い,両者の関係を明らかにする予定である。
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