本研究では、本電極構造体に対して電極外表面での物質移動流束測定に加え、電極構造体内部の雰囲気組成を直接連続モニタする世界初の試みにより、電極構造体での物質移動状況と、中間生成物との関係を解明することを目的とした。購入した質量分析機を用いて電極構造体内部のガス成分のリアルタイム計測を行うシステムを完成させた。電極構造体に厚さ3mmのスペーサーを挿入し、この側面に貫通孔を開け、直径30ミクロンのプローブを差し込んでガス分析を行うシステムとした。電極構造体に用いる多孔質板の種類(細孔構造が異なる)を変えること、また燃料に用いるメタノール濃度を変えることで、構造体内部のメタノールおよび水の各分圧が異なる条件を設定し、一定電圧下で発電を行ったときの構造体内部のガス成分の定量分析を行った。定性、定量解析から、二酸化炭素、メタノール、水、そして中間生成物として蟻酸メチル、蟻酸、ホルムアルデヒドが検出された。燃料電池運転時の各成分をリアルタイムで計測することに成功した。解析した結果、用いる多孔体の種類に係わらず、電流密度は構造体内部のメタノール分圧に一義的に依存していることが確認できた。電流密度はメタノール分圧に比例的に増加し、メタノール分圧が7.5kPaを超えたところで減少に転じた。実験条件下ではメタノール分圧が7.5kPaになるまではメタノール供給律速の状況にあり、これを超えるとクロスオーバーのせいで電流密度が下がることが分かった。また、中間生成物について各成分の生成速度と構造体内部の各成分の関係を調査し、蟻酸メチルの生成速度は(メタノール分圧/水分圧〉の2乗に比例して増大することを明らかにした。
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