研究概要 |
本研究では、多孔質板をアノードに用いる電極構造体に対して電極外表面での物質移動流束測定に加え、電極構造体内部の雰囲気組成を直接連続モニタする試みにより、電極構造体での物質移動状況と電極反応との関係を解明し、電池出力を最大にする電極構造の構築を目指した。昨年までの検討で,本電極構造体の場合、高濃度メタノールを利用し、電流密度が比較的高くなる領域ではカソードから電解質膜を通しての拡散による水の供給が律速となる領域があることが分かった。電池出力をより増大させるためカソード側に撥水性からなる多孔質膜を設置し、カソードからの水の拡散流束を増大させることを検討した。アノード、カソード外側での水およびメタノールの透過流束を計測し、電極構造体内部の各成分の蒸気圧をマイクロプローブ質量分析機で測定した。撥水性多孔質膜としてゴアテックス膜およびカーボンブラックとフルオロカーボン系のバインダーとからなるMPL膜を用いた。撥水性多孔質膜をカソードに配置することによりカソードから外部への水の排出速度を低減させることができ、その結果アノードへの水の供給速度が増大し、外気湿度RH30%では電池出力を4倍程度にも増大させることができた。また、撥水性多孔質膜を配置する際にはカソード表面に直に配置するよりも、空間を空けて配置した方がその効果が高いこと明らかにした。カソードと撥水性多孔質膜との最適な距離は外気湿度に依存し、最適値が存在した。外気湿度がRH30%では6mm,RH60%では3mmであることを明らかにした。
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