シリコン基板上にフォトリソグラフィーの手法によりマイクロチャンネルを調製し、チャンネル壁表面にゾルゲル法によりアルミナ担体を坦持し、さらにこれにミスト熱分解法により、白金触媒を坦持した。この触媒の動的特性を調べるため、顕微鏡で視野を特定できる顕微ユニットを備えた赤外分光光度計を整備した。マイクロチャンネルリアクターに坦持した触媒の顕微赤外による分光法による動的特性の観察はこれまで例がないため、次のような観察用セルを試作した。顕微鏡ステージの大きさが限られているため、マイクロチャンネル基板自身をセル構造体として用いることとし、上記マイクロチャンネル上面にシリコングリスを用いてKBr板を圧着し、これに2か所の気体の出入り口を設けた。シリコン基板底面にペルチェ素子を用いた加熱ユニットと温度制御用の熱電対を装着して、反応温度を制御できる構造とした。気体入口にマイクロシリンジポンプを設置して、ガスタイトシリンジにより微少量の気体反応物を定量的に供給し、流通反応器として使用できるようにした。まず、当該セルを用いて触媒表面の赤外吸収スペクトルが観察できる条件を明らかにした。さらに、触媒上に種々の反応物を流通させ、常温でのスペクトルを観察できることを明らかにした。また、反応性ガスとしてプロピレンを供給し、温度を上げ、条件を整えることで、π-アリル種と思われる表面吸着種の生成が示唆された。
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